美容師として活動することを夢見る方が多い一方で、「美容師を辞めたい」と悩む方も増えています。その主な理由は、労働環境の厳しさや将来への不安、人間関係の悩みなどです。
美容師を辞めたいと思ったときは、本当に辞めた方が良いのかをよく考えて、辞める場合は自分に合う転職先を探しておくことが重要です。本記事では、美容師の主な退職理由や、辞めるときの注意点、おすすめの転職先などについて解説します。
目次
美容師の離職率
美容師の離職率は、他の業界と比べても高いことで知られています。厚生労働省の発表によると、美容師の離職率には下記の傾向があるようです。
- 入社後1年以内の離職率が約50%
- 入社後3年以内の離職率が約80%
- 入社後10年以内の離職率が約90%
上記のように、美容師の離職率は明らかに高いことが分かります。10人が美容師として就職した場合は、1年で半分の5人が退職し、10年後にはわずか1人しか残らないということです。これほど多くの方が美容師を辞めてしまう背景には、さまざまな理由があるはずです。
以上の点を踏まえて、美容師を辞めたいと思う方が多い理由について、詳しく見ていきましょう。
美容師を辞めたいと思う理由5選
美容師の方が「辞めたい」と思う代表的な理由には、下記5つのものがあります。
- 給与が安い
- 下積みがつらい(特にアシスタント)
- 身体的に不安
- 人間関係の悩み
- 接客の悩み
上記それぞれの理由について、なぜ退職につながるのか、どれくらい深刻な問題なのかについて解説します。
給与が安い
給料が安いと感じることは、美容師を辞めたいと思ってしまう大きな理由です。単に給料が安いだけではなく、労働の厳しさと見合わないというのが問題となっています。
例えば、労働基準法では法定労働時間は1日8時間以内、1週間40時間以内となっていますが、美容室の実質的な労働時間はそれを大幅に上回ります。サロンによっては、1日10時間~12時間以上になることもあるでしょう。
特に、閉店後に行われるカットやスタイリングの練習は、労働時間が長くなる主な原因です。しかも、カット練習には残業代が支払われないことが多く、「割に合わない」と感じてしまうこともあります。
また、美容師はシザーやコーム、ブラシなどさまざまな道具を揃える必要がありますが、これらは基本的に自費となります。各種社会保険も、個人経営のサロンでは負担してもらえないことがあり、それらも自分で支払う必要が生じます。
このように、労働時間が長くさまざまな経費がかさむわりに給料が安いので、「イメージした業界と違う」と感じて、辞めたいと思ってしまうことも少なくありません。
下積みがつらい(特にアシスタント)
美容師免許は国家資格なので、取得するのは決して容易ではありません。しかし、苦労して資格を取得したとしても、すぐに顧客のスタイリングができるわけでもありません。
入社後しばらくの間、美容師は「アシスタント」として下積みをしないといけません。アシスタントとは、シャンプーや髪の洗い流し、各種備品の管理や補充など、先輩美容師のサポートを行う業務です。
こうした業務も重要ではありますが、美容師にとって「本当にやりたい仕事」というものでもないでしょう。しばらくしたら昇格できるとしても、アシスタントして下積みに耐えないといけないのはつらいことです。
また、下積み時代は「カット練習」も過酷です。新人美容師は特に、閉店後のカット練習が集中的に行われます。サロンが求めるレベルに達するために、スタイリングやカットなどの技術を磨くためです。
入社後しばらくは美容師としての業務ができないことは、入社1年以内の離職率が50%近くなる主な要因だと言えるでしょう。
身体的に不安
美容師は身体的に過酷な職業なので、働くなかで身体に不調が出たり、将来に不安を感じたりすることもあります。
美容師は基本的に1日を立ったまま過ごします。最近では顧客と同じように、座った状態で作業するサロンも増えつつありますが、ほとんどのサロンは立ちっぱなしです。
立ち仕事を続けると、足の筋肉が硬くなって痛みが出たり、足がむくんでつらくなったりします。さらに、カットやシャンプーなどを中腰で行うことも多く、中腰姿勢により慢性的な腰痛になることも少なくありません。腰痛が悪化すると「椎間板ヘルニア」になることもあり、美容師としての活動自体に影響が出ることもあります。
シャンプーやカラーリングによる肌荒れや、シザーやコームを使い続けることによる腱鞘炎なども、美容師の「職業病」として有名です。
こうした身体的な過酷さは、将来的な健康不安にもつながります。10年以内の離職者が90%に及ぶのは、過酷な労働で身体に不調が出てしまうからなのかもしれません。
人間関係の悩み
どのような職場でも、人間関係の悩みは退職理由になり得ます。例えば、上司や先輩からのパワハラや、同僚と上手くいかないなどの問題です。
美容師の業界はいわば「職人気質」の人が多く、上下関係が厳しくなりがちです。しかも、同僚同士の競争も激しいため、なかなか打ち解けないこともあります。美容師は芸術的な指向が強く、独特の価値観があり、「合わない」と思うこともあるでしょう。
肉体的につらいうえに職場の人間関係の悩みもあれば、精神的につらい状況に追い込まれてしまいます。倦怠感や不眠、食欲不振など「うつ病」のような症状を感じ、精神の健康のために辞職するという美容師も少なくありません。
接客の悩み
美容師という仕事は接客業なので、美容師として活動するためには接客スキルも必要です。例えば、顧客の希望を聞いたり技術について伝えたりするスキルや、スタイリングの際に顧客と雑談をするコミュニケーションのスキルなどが求められます。
しかし、こうした接客業務があまり得意ではない美容師にとっては、顧客とのコミュニケーションが苦痛に感じてしまうこともあります。頑張って慣れようとしても、身体と心が追い付かないということもあるでしょう。
また、「短すぎる」「カラーが違う」「想像どおりではない」など、顧客からクレームを出されることも。頑張ってスタイリングしたのに満足してもらえないと、つらく感じてしまうこともあるでしょう。
辞めたいと思ったときにすること(対処法)3選
美容師を辞めたいと思っても、まず一度落ち着いて考えてみることをおすすめします。どれだけ辞めたいと思っても、一度は夢に見た美容師としてのキャリアを閉じてしまうのは、決して簡単なことではありません。
そこで本章では、美容師を辞めたいと思ったときに、冷静に対処するための方法を3つご紹介します。美容師としての活動を続けるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
- 信頼できる人に相談
- 休暇をとる
- 環境を変える
信頼できる人に相談
急いで美容師を辞めてしまう前に、まずは信頼できる人に相談してみましょう。例えば、恩師や先輩、友人や家族などです。
美容業界に携わっている人でも、そうでない人でも構いません。とにかく、心を開いて話せる人に相談することが大切です。サロンの同僚に仲が良い人がいれば、その人に話してみるのもいいでしょう。
自分ひとりで悩みを抱え込んでいると、悩みはさらに深まってきます。誰かに相談することで楽になり、今後の進退について考えやすくなるかもしれません。
思い詰めて精神的に参ってしまわないように、美容師を辞めたいと思ったらその気持ちをシェアしましょう。
休暇をとる
しばらく休暇をとり、心身をリフレッシュさせることも重要です。心と身体が疲れていると、悩みもさらに深くなります。
疲れた状態では正常な判断を下せません。急いで美容師を辞めて、後で後悔してしまう人もいます。
休暇を取ることは、労働基準法で定められた労働者の権利です。思い切ってまとまった休暇を取ることで、心身の疲労や消耗をリセットできます。
そのうえで進退について改めて考え直せば、より後悔の少ない決断を下しやすくなるでしょう。
環境を変える
思い切って環境を変えるのもひとつの方法です。現在のサロンで、収入や労働環境、人間関係の問題があるなら、現在のサロンを辞めて他のサロンへ移るといいかもしれません。
「今のサロンを辞めたい」と「美容師自体を辞めたい」は、まったく別の問題です。あなたは本当に、美容師という職業自体を辞めてしまいたいのでしょうか。
他のサロンへ移って環境を変えれば、職場環境や人間関係も新たなものになります。美容師の仕事を楽しめる環境を手に入れることは、決して不可能ではありません。
辞める際の注意点
美容師を辞めるときは、できるだけリスクを減らして、トラブルが起きないようにすることが重要です。そのために、下記3つのポイントを意識しましょう。
- 安易な決断をしない
- 引き継ぎは丁寧に行う
- 働きながら転職活動をする
安易な決断をしない
美容師を辞めるという決断を、安易にしないことが大切です。美容師という職業自体に問題があるのか、今のサロンに問題があるのかを考えてみましょう。前述したように、別のサロンへ移れば、美容師として活躍しやすい環境が手に入るかもしれません。
引き継ぎは丁寧に行う
退職の相談は、遅くとも1か月前にはしておきましょう。後任の担当者への引き継ぎを行っておく必要があるからです。顧客の情報や好みのスタイルなど、情報の共有を丁寧に行っておくと、今まで付き合いがあった顧客の満足度を維持できます。
働きながら転職活動をする
現在のサロンへ勤めながら、転職活動することをおすすめします。転職先が決まるまで時間がかかりますし、生活のための資金も必要です。働きながらの転職活動は大変ですが、経済的に余力がある状態で行う方が、より良い転職先を探しやすくなります。
美容師の転職先
美容師という職業自体を辞める場合は、新たな業界へ転職する必要があります。その際は、下記4つの業界がおすすめです。
- サービス業
- 営業職
- 事務職
- IT業界
美容師は接客業なので、コミュニケーションスキルが要求されるサービス業や営業職は、美容師の経験がある方に向いた業界です。
事務職は協調性が求められるため、チームでの仕事やコミュニケーションに慣れた美容師の方に適切です。
また、IT業界は未経験でもチャレンジしやすく、WebプログラマーやWebデザイナーも大半は学歴不問です。まったく違う業界に転職したい方は、IT系がおすすめです。
シェアサロンで働くメリット
シェアサロンを利用するメリットを一部紹介します。
・好きな時間に自由に働ける
・収入アップが狙える
・低リスクで独立できる
・好きな場所で働ける
【おすすめ記事】シェアサロンとは?美容師が利用するメリットデメリットを紹介
シェアサロンなら自由に働くことができます
過酷な労働環境や将来への不安から、美容師を辞めたいという人は少なくありません。もし辞める場合は、引き継ぎをしっかり行い、自分に合った業界に転職することが重要です。しかし、そもそも本当に美容師自体を辞めてしまいたいのか、もう一度冷静に考えてみましょう。
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